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寄生虫検査バーチャル自己学習システム

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使用事例 | コラボレーション | 業界別 | 教育 | ヘルスケア

5 minutes read

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背景

臨床検査では顕微鏡で組織や細胞や病原体を観察して診断を行う分野があります。顕微鏡観察の際、それらの検体のプレパラートを作成する必要がありますが、検体が人体から採取されたものや、日本では手に入りにくい寄生虫卵など非常に貴重なものが多く、作成できる数に限りがあります。従来の寄生虫感染症の検査実習は、実習のたびに貴重な検体を用意し、各自が顕微鏡を使用して検査し、目的のものが正しいのかどうか指導者が確認して回らなければならず、費用も時間もかかるものでした。

近年、顕微鏡で臨床検査を行う分野では顕微鏡画像のデジタル化が進み、画像データであるバーチャルスライドをコンピュータ画面で見て検査することが日常になりつつあります。そこで、今回、日本では貴重な寄生虫サンプルの顕微鏡デジタル画像とVR技術をミックスして、VRヘッドセット上で顕微鏡画像を観察し、寄生虫の鑑別ができるようになる自己学習システムを開発しました。

特徴

寄生虫検査バーチャル自己学習システムのコンテンツはバーチャルスライドモードと、テストモードの2部構成になっています。

バーチャルスライドモードでは、実際に顕微鏡で観察するように、両手のコントローラーで拡大・縮小・移動しながら自らの目で寄生虫や寄生虫卵を探すことができるため、サンプルや顕微鏡を用意しなくても寄生虫検体検査トレーニングを行うことができます。また、ヒントモードを使用して、実施者自ら目的のものを探せるようになる能力がつきます。バーチャルスライドは、株式会社キーエンスの倒立型オールインワン顕微鏡BZ-X800を用いて最大11,000 X 5,500 pix、フルカラーjpg画像を取得しました。ソフトウェアはイマクリエイト株式会社と共同開発し、Focus3に実装させています。バーチャルスライドをコンピュータ画面で観察する際、PC1台に対して複数名がそれを観察し、全員が操作を習得するまでに長時間が必要になると思われます。一方、VR機器が用意できれば、各自が自分の理解度に応じて学修を進めることができます。実際に寄生虫コンテンツを実習で使用したところ、Focus3の簡単な操作説明後、指導者1名で、20名の学生が簡単な補助だけで問題無く操作できています。

バーチャルスライドモードで目的のものが探せるようになった後、得た知識をテストモードで確認することができます。このモードでは前面に3つのパネルを用意し、下方に問題を提示させ、指で押して解答します。20問の問題を用意し、解答後に正誤と正答率がフィードバックされます。VR画面は没入感があり、短時間で高い教育効果が期待できます。

発展性

コンピュータのモニター上でのバーチャルスライドを用いた検査、診断は、近年、医学の多くの分野で使用されるようになっています。特に病理や血液の分野では顕微鏡での観察が組織、細胞レベルでの癌の診断に不可欠です。バーチャルスライドの作成には長時間を有していましたが、近年、顕微鏡の性能が大幅に上がり、臨床検査の現場でも使用に耐えられるものになりました。

バーチャルスライドのようなデジタルデータはネットワーク環境があれば遠隔地でも行えます。日本では寄生虫感染症が問題になる事はほとんどありませんが、海外ではマラリア、鉤虫症、回虫症、住血吸虫症、フィラリア症等、主な寄生虫症の合計で、年間死亡者数が250万人、感染者は10億人にもなります。例えば、海外から顕微鏡の画像データを送付してもらい、日本で検査を行う事は容易にできます。VR機器の機能を使えば思いがけない感染症診断ネットワークが構築されるかもしれません。また、このソフトウェアが海外の医療関係者へのトレーニングだけではなく、一般人の寄生虫感染症への正しい知識の習得と興味の向上が期待でき、ひいては、寄生虫感染症の世界的な減少に寄与できると考えています。

機能の将来性

今回開発したバーチャル自己学習システムは、バーチャルスライドモード、テストモードともに、画像および、設問が確定されたもので変更ができませんが、今後、類似のソフトウェアの開発には時間と予算の許す範囲で画像や設問の入れ替え機能を実装させること可能です。バーチャルスライドの画素数もさらに大きな画像が実装できそうです。つまり、顕微鏡画像だけではなく、大きな画像から目的のものを探させるような課題がある他分野への応用が期待できます。

バーチャルスライド作成時にはZスタックによって、視野深度が調整され、検体が厚い場合、浅い所から深いところまでピントが合った状態で2次元画像ファイルを作成することが可能です。バーチャルスライドではこのようにピントを合わせずに観察できることが利点ですが、立体構造の把握が難しくなります。

顕微鏡での検体検査では、自分でピントを調整し、立体構造を確認することが求められますので、バーチャルスライドモードで、拡大・縮小・移動だけではなく、複数枚のZスタック画像を元にピントも調整できるようになれば、顕微鏡を用いる様々な分野への応用も期待できます。VRゴーグルは左右の目で別の映像を投影することが可能なので、厚さのある検体画像の検査には非常に有益に働きます。Focus3でバーチャルスライドの3次元画像を表示させるために顕微鏡の撮影方法がやや複雑になり、画像ファイルの取得に時間が掛かることが予想されますが、工夫すれば手に届きそうなところまで来ていると感じています。


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バーチャルスライドモードで、ヒントを元に目的のものを探している様子


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バーチャルスライドモードで得た知識をテストモードで確認している様子


熊本大学医学部保健学科 公式ホームページ: http://www.hs.kumamoto-u.ac.jp/